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February 12, 2005 Saturday
月読
太田忠司 文藝春秋
人は死ぬと『月導』(つきしるべ)を遺し、『月読』(つくよみ)だけがそこから死者の最期の想いを読むことが出来る…これが太田氏が作ったこの世界の決まり事である。
読み進むうちに、「もしや私は、今までの人生で『月導』のことを知らずに過ごしてしまっただけなのではないか。『月読』は本当にいるのではないか」という錯覚に囚われそうになった。
それほど、この本の世界観はリアルであり、かつ幻想的である。
『月読』である朔夜という青年も、河井という刑事も、克己という高校生もそれぞれ魅力的で生き生きと描かれている。太田氏の文章力によるものなのはもちろんだが、おそらく氏の人柄も作品の雰囲気に現れているのだろう。
事件の動機も、決着の付け方も、きちんとはまった作品に仕上がっている。
静かで、とても暗い。しかし闇の暗さではなく、月明かりのある仄暗さである。ぜひ多くの人に読んで欲しい。
ISBN4-16-323690-2 ¥1857+税
投稿者 Miyuki Noma : 07:26