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March 24, 2005 Thursday
少女大陸 太陽の刃、海の夢
柴田よしき 祥伝社ノン・ノベル
去年の夏に出た本だが、ちょっと読むのが遅れてしまった。しかし、読み始めると最後まで止まらない。やはり柴田さんはSFも面白い。
物語は現代よりずっと未来の、文明が滅びた後に生き延びている小さな世界を舞台にしている。そこは女性だけの社会で、子どもは宝ものとしてみんなに育てられる。…こう書くと、萩尾望都先生の「マージナル」を連想される方も多いかも知れない。もちろん筋書きは全く違うのだが、あちらは男性だけでこちらは女性。共に「終末SF」として「片方だけの性」をテーマにしているところが興味深かった。
前半にはその社会の細かい取り決めや生活ぶりが描写されていて、そういう設定もとても面白い。特に「ティータイム」のシーンなどが女性作家ならではだと思う。欲を言えば、作中にチラッと出てくる「口紅」についての説明をもっと読みたかった。
中盤から後半にかけては、その世界の存続や意味について大きく展開していくのだが、続きがどうなるのか気になって本を置くことが出来なかった。そして、ラストの「広がり」は感動的だ。
おそらく作者は意図的に読者を泣かせようと書いたものではないと思うが、読後、涙が出そうになったのは私だけではないだろう。
ISBN4-396-20782-4 ¥1260
投稿者 Miyuki Noma : 07:13