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April 28, 2005 Thursday 

魂萌え!

桐野夏生 朝日新聞社

夫に急死された59才の女性の生き方について丁寧に描いた本。全体を通して「孤独」についてじっくりと語られている。
主人公は、自称「自分に自信がない」専業主婦だが、夫の死に直面して大きく変わってしまった日常と、残りの人生設計についての現実を突きつけられて戸惑っている。

彼女の周りに登場する人達も、破天荒な人生を送っている者や、ごくありふれた一般人などさまざまだが、飛び抜けたヒーローやヒロインがいない代わりに、見事にリアリティのある人間として描かれている。その分贔屓のキャラクターというものが出来にくく、どれも胡散臭く感じられてしまうのだが、おそらく現実の社会というのはこういうものなのだろう。

刑事事件的なものが起こるわけではなく、ミステリのカテゴリには入らない作品だと思うが、とても面白く読んだ。

ISBN4-620-10690-9 ¥1700+税

投稿者 Miyuki Noma : 07:04