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July 21, 2005 Thursday 

孤宿の人・上下巻

宮部みゆき 新人物往来社

宮部みゆき氏が最も得意とするタイプの時代物である。だが、これまでの江戸を描いた時代物と違い、今回は四国の小国『丸海藩』が舞台となっている。
不幸な身の上の孤児である"ほう"が、丸海の人々と関わりながら成長していく物語であるが、藩の存続に関わる事件を目の当たりにして、彼女と親しかった人々が容赦なく巻き込まれていく。しかし、"ほう"が健気で一生懸命であることが作品の雰囲気を柔らかくし、一気に読ませられた。

今さら言うまでもないことだが、宮部氏は、この"ほう"のようなタイプの少女を描くのが非常に巧い。読者は誰もが彼女の行く末を案じ、幸せを願わずにはいられないだろう。

ラストの、「藩の意図」の仕掛けの部分をもう少し詳しく知りたいという野暮な希望はあるのだが、それは言わぬが華か。それより重要なのは、その仕掛けにまつわるそれぞれの人物の想いなのだろうから。

上巻:ISBN4-404-03257-9 下巻:ISBN4-404-03258-7 各¥1800+税

投稿者 Miyuki Noma : 06:59