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July 15, 2005 Friday 

切れない糸

坂木司 東京創元社

坂木司さんが光文社「GIALLO」に連載中の「デンタル・ディティクティブ」シリーズの第二話から、私がイラストを担当することになった。実は坂木さんの著書はこれまで未読だったが、イラストの仕事がきっかけで誰よりも早く最新作を読める機会に恵まれ、それが面白かったので遡って既刊を読んでみることにした。

ひょんなことから家業のクリーニング店を継ぐことになった若者と、その店のある商店街の人々にまつわる「日常の謎」系の短編集である。
クリーニングについての蘊蓄も楽しいが、主人公のキャラクターが癒し系で和む。探偵役の友人や店の従業員には謎が多いが、みんな優しいので安心して読むことが出来る。謎そのものは軽めなのでコアなミステリファンには物足りないかも知れないが、ミステリの入門編として若い読者に勧めたい。敢えて言うなら、西澤保彦氏の「タックシリーズ」や、光原百合氏の「最後の願い」「十八の夏」などの短編集などに雰囲気が近いだろう。

ISBN4-488-01205-1 ¥1800+税

投稿者 Miyuki Noma : 07:01