October 15, 2005 Saturday
容疑者Xの献身
東野圭吾 文藝春秋
久しぶりにカッチリとした本格ミステリを読んだ。実は前作の「探偵ガリレオ」は、正直に言ってあまり印象に残っていない。天才科学者が探偵役というのはツボのはずなのだが、どうしてあまり記憶にないのか不思議なところではある。
しかし、この作品はとても面白かった。斬新なトリックかと言われれば、もしかすると古典的とも言える手法なのかも知れないが、作者の誘致が巧妙なので綺麗に騙されてしまう。
一カ所、最終的などんでん返しにつながるのではないかと疑った部分があるのだが、それはどうやら本筋とは無関係だったようだ。ネタバレではないが、これから読む方に先入観を植え付けないように伏せ字にすることにする。(読みたい方はドラッグしてください)
靖子についての描写で、複数の登場人物が「あれだけの美貌」とか「美しい」という表現をしているのに、本人の台詞などでは「こんな中年の」とか「魅力的でもないのに」といったニュアンスの言葉が数カ所登場する。深読みしてしまうと、<靖子>として描かれている人物と事件の根幹に関わった女性は別人なのではないかと勘ぐってしまった。
結果的にそれは間違いだったのだが、女性の心理描写として若干整合性がとれていないような気がしたのは事実である。
だが、上記の部分は決してこの作品の疵ではない。前編通して非常にクリアで、かつフェアな本格ミステリである。
ISBN4-16-323860-3 ¥1600+税
投稿者 Miyuki Noma : 08:34