« 40 翼ふたたび | メイン | 第三の時効 »

May 18, 2006 Thursday 

眠れぬ真珠

nemurenu.jpg

石田衣良 新潮社

「40 翼ふたたび」と続けて読んだせいか、この2作は対になっているような印象を受けた。こちらは45歳の女性アーチストを主人公にした大人の童話である。

私は自分が女性であるからか、「40 翼ふたたび」よりもこちらの方がずっと面白かった。以前から石田氏の描く女性は好きなのだが、17歳も年下の素直で情熱的な(しかも才能もある!)青年とのラブストーリーという設定は、もうそれだけで嬉しがらせてくれる。

と、ここまで書いて、最近こんな雰囲気の小説を読まなかったか? と自問自答してみたら、なんと思い当たったのはハーレクインロマンスだった。「大人の童話」という意味で、その感覚は間違っていないと思う。

キャラクター設定のうまさ、話の展開の巧みさは流石。主人公がかなりヘビーな目に遭うシーンもあるのだが、大人の対応で乗り越えながら必死で耐える描写は、物語全体に流れる静けさと相まって感動的だった。タイトルに使われている「真珠」というモチーフもいい。
主人公が銅版画のアーチストという「静」を描くのに対して、青年が映像作家という「動」を扱う存在であるという対比も効果的な演出だと思う。また、「黒」と「白」の描写と対比も多く、作品全体にモノトーンでありながら豊かな色彩を与えている。

そう言えば、中年女性と青年の恋を描いた、スーザン・サランドンとジェームス・スペーダー主演の映画「ぼくの美しい人だから」の原作のタイトルは「ホワイト・パレス」だった。(邦題は映画と同じ)そんなことをつらつらと思い出してしまいながら、しみじみと読んで良かったと思える作品である。

ISBN4-10-459502-0 ¥1600+税

投稿者 Miyuki Noma : 03:31