May 16, 2006 Tuesday
M.G.H.—楽園の鏡像
三雲岳斗 徳間書店
レオナルド・ダ・ヴィンチが探偵役として活躍する「聖遺の天使」と「旧宮殿にて」が面白かったので読んでみた。
私のSFのオールタイムベストテンの上位には、ジェイムズ・P・ホーガンの「星を継ぐもの」が入っているくらい、元々、SF作家の書く推理小説と、推理作家の書くSFは好きである。(笑)
ただ、残念ながら「最初の事件」は現場となっている場所の説明が少々わかりにくく、具体的にどんな風に殺人を実行したのか掴むことができなかった。「第二の事件」の方はとてもわかりやすかったのだが。
「旧宮殿にて」のエントリーにも書いたが、この著者は森博嗣氏のファンなのだろうかと考えている。キャラクターの造形などに影響が見られる気がするのだが、比べてしまうと若干物足りなさを感じてしまう。おそらく人が良すぎるのだろう。(著者もキャラも)
ISBN4-19-861194-7 ¥1600+税
投稿者 Miyuki Noma : 19:14
March 24, 2005 Thursday
少女大陸 太陽の刃、海の夢
柴田よしき 祥伝社ノン・ノベル
去年の夏に出た本だが、ちょっと読むのが遅れてしまった。しかし、読み始めると最後まで止まらない。やはり柴田さんはSFも面白い。
物語は現代よりずっと未来の、文明が滅びた後に生き延びている小さな世界を舞台にしている。そこは女性だけの社会で、子どもは宝ものとしてみんなに育てられる。…こう書くと、萩尾望都先生の「マージナル」を連想される方も多いかも知れない。もちろん筋書きは全く違うのだが、あちらは男性だけでこちらは女性。共に「終末SF」として「片方だけの性」をテーマにしているところが興味深かった。
前半にはその社会の細かい取り決めや生活ぶりが描写されていて、そういう設定もとても面白い。特に「ティータイム」のシーンなどが女性作家ならではだと思う。欲を言えば、作中にチラッと出てくる「口紅」についての説明をもっと読みたかった。
中盤から後半にかけては、その世界の存続や意味について大きく展開していくのだが、続きがどうなるのか気になって本を置くことが出来なかった。そして、ラストの「広がり」は感動的だ。
おそらく作者は意図的に読者を泣かせようと書いたものではないと思うが、読後、涙が出そうになったのは私だけではないだろう。
ISBN4-396-20782-4 ¥1260
投稿者 Miyuki Noma : 07:13